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アミノ酸代謝異常

  • アミノ酸代謝異常について

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  • 測定指標:フェニルアラニン Phe 対象疾患:● フェニルケトン尿症

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  • 測定指標:ロイシン イソロイシン Leu+Ile、バリンVal
    対象疾患:● メープルシロップ尿症

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  • 測定指標:メチオニンMet 対象疾患:● ホモシスチン尿症

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  • 測定指標:シトルリンCit 
    対象疾患:● シトルリン血症1型 アルギニノコハク酸尿症
    シトリン欠損症

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  • 測定指標:チロシンTyr 対象疾患:× 高チロシン血症1型

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  • 測定指標:アルギニンArg 対象疾患:× アルギニン血症

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有機酸代謝異常

  • 有機酸代謝異常について

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  • 測定指標:C3 C3/C2
    対象疾患:● メチルマロン酸血症 プロピオン酸血症

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    C3/C2 3回連続陽性
    Q 生後1ヶ月半の男児で、新生児MS検査でC3/C2の数値が2回とも高く、3回目の検査結果では、C3/C2が更に上昇傾向のため、再度血液ガス検査を施行し、血中アミノ酸分析を提出中です。今は全身状態安定していますが、今後の再検査のタイミング、メチルマロン酸血症/プロピオン酸血症の疑いでのフォロー体制、精密検査の必要性等を教えて欲しいです。
    A

    検査データを拝見すると、C3/C2の上昇を認めるものの、C3はカットオフ以下で体重増加も良好のようです。C3の上昇かつC3/C2の上昇を認めた場合にはメチルマロン酸血症、プロピオン酸血症の鑑別を行うために尿有機酸分析を行います。本症例ではタンパク負荷も十分に行われている状態でC3の上昇を認めないことから、正常の可能性が高いと考えられますが、尿有機酸分析を行ったうえで判断されてはいかがでしょうか。
    精密検査の必要性についてもお尋ねがありますが、生後1か月の受診時に行われた診察と検査がマススクリーニングの精密検査に該当します。その時に尿有機酸分析まで行うことで、早期に診断を確定し不必要なフォローを減らすことも大切です。

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    C3, C3/C2の反復再検査
    Q 初回採血検体では、 C3・C3/C2カットオフ値をわずかに超えていたため、再採血を依頼しました。C3/C2のみがカットオフ値を越えたため、3回目の採血を依頼。3回目採血検体は、C3はカットオフ値をわずかに超えており、精検にすべきでしょうか?
    A

    提示されたC3, C3/C2はプロピオン酸血症の典型例や最軽症型と言われる症例よりも低い値です。何度か再検査するのも、親の不安を募らせますので、一度精検で尿有機酸分析をおこなって、プロピオン酸血症、メチルマロン酸血症のパターンかどうかを判定しておくのがすっきりしていいと思います。

  • 測定指標:C5 対象疾患:● イソ吉草酸血症

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  • 測定指標:C5-OH
    対象疾患:● メチルクロトニルグリシン尿症
    HMG血症 (ヒドロキシメチルグルタル酸血症)
    複合カルボキシラーゼ欠損症
    βケトチオラーゼ欠損症

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    C5-OH上昇を呈する極低出生体重児の精査
    Q 極低出生体重児において乳児期に体重増加とともにC5-OHが上昇する症例の精査
    A

    低出生体重児が成長過程で離乳食への移行が順調に行かず体重増加不良を伴ってくるとC5-OHが高値を示すことをしばしば経験します。ビオチン欠乏症がないか、例えば頑固な湿疹や脱毛などの症状はないかを観察します。臨床症状より欠乏症が疑われる場合は、ビオチン補充を開始するのが治療的診断になります。またろ紙血のみの再検査は無意味であり、血清C5-OH測定や尿有機酸分析を行い先天代謝異常の可能性を検討することが必要です。メチルクロトニルグリシン尿症(3MCC)、マルチプルカルボキシラーゼ欠損症(MCD)がC5-OH上昇の代表的疾患であり、尿有機酸分析にて原因となっている物質を確認します。MCDではホロカルボキシラーゼ欠損とビオチニダーゼ欠損が原因となる病型があり、後者ではビオチン欠乏に伴う皮膚症状が特徴です。尿有機酸分析結果によってはビオチニダーゼ酵素活性測定が必要となります。体重増加不良に伴う慢性的な異化亢進状態がないか、血中アミノ酸分析やケトン体分画(血糖値と血液ガスと同時に)の評価も病態の考察に役立ちます。タンデムマス分析と同時に尿有機酸分析を行いながら基礎疾患の除外を行います。その過程でHMG CoA lyase欠損症、βケトチオラーゼ欠損症、3-メチルグルタコン酸尿症、2-メチル-3-ヒドロキシ酪酸尿症など稀な疾患も鑑別可能です。

    C5-OHが陽性となった場合の対応や精密検査について
    Q C5-OHが陽性となった場合の対応や精密検査について
    A

    [1]初回濾紙血検査でC5-OHが陽性であった場合:
    (1)C5-OH>2.0μMなら、直接精密検査で精密検査医療機関受診を指示。医療機関では、①児について、一般生化学検査(乳酸・ピルビン酸、アンモニア、血糖など)と、外注検査(尿有機酸分析)を実施し、ヒドロキシメチルグルタル酸尿症、複合カルボキシラーゼ欠損症、3-メチルクロトニルグリシン尿症の鑑別を行う。初回濾紙血で遊離カルニチン低値となっていた場合はカルニチンを服用させ、その後外注検査(血清カルニチン分析)でカルニチン欠乏が改善しているか確認する。②児が患者でなければ、説明と同意を踏まえ、母親が3-メチルクロトニルグリシン尿症である可能性について確認するため、母の外注検査(尿有機酸分析)を実施する。児のカルニチン値が低い場合は、母の血清カルニチン分析も実施し、カルニチン欠乏があればカルニチンを投与する。

    (2)C5-OH<2.0μMの陽性なら、再採血濾紙検査とし、再度陽性であれば精密検査の上記手順を実施する。

     

    [2]初回濾紙血ではC5-OHは陰性であったが、低体重やその他の理由での再採血検査で陽性となった場合:

    再度濾紙血を要請することなく、精密検査とする。精密検査医療機関では、外注検査(尿有機酸分析)を実施し、対象疾患の鑑別診断をおこなう。このような場合、治療を要しない軽微なビオチン欠乏がほとんどである。

     

    <濾紙血検査でのC5-OH値の評価について>

    濾紙血分析は全血分析であり、赤血球中のアシルカルニチン濃度を強く反映する。赤血球膜におけるカルニチン・アシルカルニチンの輸送は一般的に緩徐であり、特に長鎖アシルカルニチンや水酸基を有するアシルカルニチン(C5-OHなど)はほとんど細胞外へ輸送されないと考えられている。赤血球内のアシルカルニチンは赤芽球ミトコンドリア内代謝に由来し、ビオチン欠乏が生じるとその時期に合わせて赤芽球内にC5-OHアシルカルニチン(3-hydroxyisovalerylcarnitine)が蓄積し赤血球内に留まり、循環血中に赤血球寿命に対応してC5-OH濃度上昇を維持することとなる。このため、現状のビオチン欠乏や代謝異常を評価するには、赤血球を含む濾紙血での検査は適切ではなく、赤血球を含まない血清(血漿)でのアシルカルニチン分析でC5-OH濃度を測定すべきである。低出生体重児のビオチン欠乏を評価するために濾紙血での検査を繰り返すことは百害あって一利無しである。また、上記代謝異常症のビオチン治療評価についても、血清での検査を行うべきである。尿有機酸分析も評価に有用である。

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  • 測定指標:C5-DC 対象疾患:● グルタル酸血症1型

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脂肪酸代謝異常

  • 脂肪酸代謝異常について

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    脂肪酸代謝異常症疑いの精査について
    Q 低ケトン性低血糖を頻繁に起こす児で、低血糖時のインスリンが測定感度以下のため脂肪酸代謝異常症を疑っています。今後の精査を進めるにあたり、血液のアシルカルニチン分析はろ紙血と血清との違いはありますでしょうか。また、他に追加すべき検査がありますか?
    A

    血液のアシルカルニチン分析は血清のほうがろ紙より、長鎖アシルCoAの感度が高いです。血清で依頼されるか、血清とろ紙のペアで実施されるとよいと思います。
    他の検査として、尿有機酸分析は脂肪酸代謝異常症では有用性が低いものの他疾患の鑑別のため実施されたほうがよいと考えます。
    脂肪酸代謝異常症の確定診断のためにはアシルカルニチンプロファイルをみてから、候補疾患ごとに酵素活性、プローブアッセイ、遺伝子検査などにすすむことになります。

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  • 測定指標:C8 C8/C10
    対象疾患:● MCAD欠損症 (中鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症)

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  • 測定指標:C14:1 C14:1/C2
    対象疾患:● VLCAD欠損症 (極長鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症)

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    C14:1/C2, C14:1軽度高値の無症状症例について
    Q 現在日齢15日、タンデムマス検査結果が陽性、再検査の依頼有(直接精検の記載は無)。
    A

    タンデムマス法(アシルカルニチン分析)による脂肪酸代謝異常症のスクリーニング検査は、脂肪酸の利用(β酸化)が活発な状態での検体ほど異常値が観察されやすい、という特徴があります。特に新生児マススクリーニングでは、哺乳不足などによる異化亢進状態で濾紙血採取が行われると、VLCAD欠損症の指標であるC14:1が軽度上昇を呈しやすい傾向にあります。それは全くの非特異的変化(=偽陽性)としても生じうるのですが、罹患者ないし保因者と結論される場合もあり、即断することは難しいです。
    マススクリーニング対象の脂肪酸代謝異常症のうち、VLCAD欠損症のほかMCAD欠損症・三頭酵素欠損症・ CPT-2欠損症においては、哺乳が進んで脂肪酸の利用が抑制されると、指標値の異常が不明瞭化していく傾向にあります。濾紙血による再検では特にそのような傾向が強く、比較的軽症の患者を見過ごす危険を生じるため、異常値が軽度であっても、原則として病院小児科への精査来診(直接精検)を指示し、より高い感度が得られる血清でのタンデムマス分析を行うことが望ましいです。また、他の生化学検査(尿中有機酸分析など)で特異的所見を得ることはできないため、診断確定には、白血球や線維芽細胞を用いた酵素活性測定ないし脂肪酸代謝能測定が必要です。

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    VLCAD欠損症スクリーニングの判定に際して
    Q VLCAD欠損症スクリーニングでのC14:1とC14:1/C2のカットオフ値の問題点は?
    A

    ①C14:1/C2はスクリーニング指標として機能していないようです。②C14:1も異化亢進状態でカットオフ値を越えやすいです。③C14:1がカットオフ値を越えた場合、C14:1がC8、C10、C12、C14より高値であることをもって陽性とし、即精密検査で血清(血漿)アシルカルニチン分析でC14:1の上昇を確認すべきです。④C14:1がカットオフ値を越えていなければ、C14:1がC8、C10、C12、C14より高値であっても、陽性判定とはしません。<理由>母乳栄養が推進される中で母乳分泌不充分・哺乳量不足のために異化亢進状態にある新生児がしばしば経験されます。このような状況では、VLCAD欠損症ではないのに、容易にC14:1やC14:1/C2がカットオフ値を越え陽性判定となります。当然偽陽性なのですが、この場合、全てのアシルカルニチンの値を眺めてみるとC2が上昇し、C0も時に減少し、そしてC8からC14までおしなべて上昇していることに気づかれます。VLCAD欠損症では、C14:1がC8、C10、C12、C14の全てと比べて低いことは経験されていません。ただし、④の場合に軽症型VLCAD欠損症患児である可能性については今後検討が必要です。

    C14:1が陽性となった場合の対応や精密検査について
    Q C14:1が陽性となった場合の対応や精密検査について
    A

    タンデムマス法(アシルカルニチン分析)による脂肪酸代謝異常症のスクリーニング検査は、脂肪酸の利用(β酸化)が活発な状態での検体ほど異常値が観察されやすい、という特徴があります。
    したがって哺乳不良などの何らかの理由により異化亢進状態となった患者では、VLCAD欠損症の罹患者でなくとも、C14:1の軽度上昇がしばしば経験されます。
    軽症例の見逃しを防ぐため、初回ろ紙血検査がカットオフポイントを超えた場合には以下のような対応をとることが、現在のところ推奨されております。
    ・血液検体のタンデムマス分析再検について
    マススクリーニングの対象となっている脂肪酸代謝異常症のうち、今回ご相談のVLCAD欠損症のほか、MCAD欠損症・三頭酵素(TFP)欠損症・ CPT-2欠損症においては、哺乳が進むに連れて脂肪酸の利用が抑制されるため、タンデムマス分析の再検を繰り返すと異常値が不明瞭化していく傾向にあります。
    濾紙血による再検では特にそのような傾向が強く、酵素障害の高度な真の罹患者の場合はともかく、ご相談の新生児のように「軽症例ないし偽陽性」というケースでは、濾紙血での指標値の正常化を以て精査不要と判断することは、いわゆる「見逃し」の危険を伴います。
    血清でも同様の問題が完全に解消されるわけではありませんが、濾紙血よりも高い感度が得られますので、上に列挙した脂肪酸代謝異常症の陽性例については、原則として前例病院小児科への精査来診(直接精検)を指示し、血清でのタンデムマス分析を提出するべきであります。
    ・その他の検査に関して
    VLCAD欠損症については、血清タンデムマス分析以外の生化学検査(尿中有機酸分析など)で特異的所見を得ることはできません。血清C14:1の異常が顕著なものであれば、それだけでも罹患者と考えてほぼ間違いないところですが、軽度上昇例についてはC14:1の値だけで判断することは困難です。確定診断法としては以下の検査が挙げられます。
    ・酵素活性測定ないし脂肪酸代謝能測定
    <相談先>
    島根大学小児科(皮膚生検→線維芽細胞)
    国立成育医療研究センター研究所マススクリーニング研究室(広島大学小児科との共同研究として実施)
    (ヘパリン血→リンパ球)
    ・遺伝子解析
    マススクリーニング対象疾患の遺伝子解析は厚労省の深尾教授が主任研究員の研究班にて実施されております。
    <相談先>岐阜小児科 深尾 敏幸.教授
    厚生労働科学研究委託事業 新生児タンデムマススクリーニング対象疾患の診療ガイドライン改定 診療の質を高めるための研究 のホームページに依頼法が載っています。

  • 測定指標:C16-OH C18:1OH
    対象疾患:● TFP(LCHAD)欠損症 
    (三頭酵素/長鎖3-ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素欠損症)

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  • 測定指標:C0/(C16+C18)
    対象疾患:● CPT1欠損症 
    (カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ-Ⅰ欠損症)

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  • 測定指標:C16 (C16+C18:1)/C2
    対象疾患:■ CPT2欠損症 
    (カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ-Ⅱ欠損症)
    CACT欠損症 
    (カルニチンアシルカルニチントランスロカーゼ欠損症)

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  • 測定指標:C0
    対象疾患:■ 全身性カルニチン欠乏症 (OCTN2異常症)

    小児科医師等、医療関係者の方へ

    C0低値によるタンデムマス再検査(全身性カルニチン欠乏症の疑い)
    Q C0低値症例の精密検査について
    A

    新生児タンデムマススクリーニング検査の結果、フリー、アシルカルニチンとも低い場合はまず全身性カルニチン欠乏症(カルニチントランスポーター欠損症)の可能性 を考えて診断を進める必要があります。フリーカルニチンの低値が持続すると脂肪酸代謝障害による代謝発作や高アンモニア血症を引き起こす可能性があります。同時に母親のカルニチン欠乏症を考慮する必要あり、母親自身が未診断のカルニチン欠乏症のことがあります。また出生体重等からはIUGR等の胎内での栄養障害の影響ではないかを検討します。
    精密検査が必要な症例では以下の検査を実施します。
    胸部Xp、心電図、心エコー、腹部エコー
    血液一般、血液生化学(トランスアミナーゼ、CK、遊離脂肪酸を 含めて)、尿一般、尿生化学
    血中ケトン分画、アンモニア、血糖、血液ガス
    血液アミノ酸分析、尿アミノ酸分析
    尿有機酸分析
    尿中フリーカルニチン排泄率の測定(血中、尿中のフリーおよびアシル カルニチンを測定しクリアランスをみる
    カルニチン分画の測定は外注の委託検査会社で可能ですが、項目として保険収載にはなっていません。以上の検査結果よりカルニチントランスポーター欠損症が疑わたら、遺伝子検査が確定診断に有用です。

    全身性カルニチン欠乏症診断のための、遊離カルニチン分画排泄率の求め方
    Q 全身性カルニチン欠乏症診断のための、遊離カルニチン分画排泄率の求め方
    A

    遊離カルニチン分画排泄率(%)

    =[(尿中遊離カルニチン×血清クレアチニン)/(血清遊離カルニチン×尿中クレアチニン)]×100

    基準値は 1.34±0.75%

    参考文献  大浦敏博.全身性カルニチン欠損症とカルニチン療法。小児科 第40巻 第9号 :1042-8, 1999年

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  • 測定指標:C8
    対象疾患:■ グルタル酸血症2型

    小児科医師等、医療関係者の方へ

    グルタル酸血症2型疑いの患児のフォローアップについて
    Q 新生児MSでグルタル酸血症2型を疑れた患児。県外の医療施設より紹介。濾紙血初回検査結果(カットオフ) C5DC 0.20(0.3),C6 0.06(-),C8 0.18(0.3),C10 0.50(0.4),C12 0.26(-),C14 0.26(-) 血清再検結果は異常所見なし。この症例について体調不良時の血清での再検は必要ですか。白黒はっきりしない状態でいつまでどうフォローアップすべきでしょうか。
    A

    グルタル酸血症2型の判定は難しい面もありますが、血清のアシルカルニチン分析の方が信頼性があると考えられます。その検査での再検査で異常がなく、尿有機酸分析(これをやったかの情報はないですが)でもグルタル酸血症2型のパターンが出ないのであれば、通常は否定的と考えていいのではないでしょうか?少なくとも新生児マススクリーニングで拾い上げられるグルタル酸血症2型ではないといえます。グルタル酸尿症2型の最軽症例(成人になって筋症状で発症する例、極めて稀です)は血清、ろ紙ともにアシルカルニチン分析では正常になることがありますが、この様な場合はそもそも突然死などで発症する事はないのでスクリーニングで見つける必要は必ずしもないと考えられています。遺伝子解析についても例外的な事を考えると、GA2ではないと言うのはとても難しいため、現状では血清アシルカルニチン分析でまったくの正常である場合はそれ以上の追求は行われない事が多いです。初回採血時に異化亢進状態である場合(哺乳量が安定しない、体重減少が多い、等)には偽陽性となる場合が多いです。本症例はそのような事が確認されれば、初回の検査所見が二次的な変化であったと考える間接的な情報になると思われます。

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その他

  • 小児科医師等、医療関係者の方へ

    Critical sampleが少量の場合の優先的な検査項目について
    Q 少量のcritical sampleなら何を優先的に提出するのがよいのでしょうか?ケトン体分画、FFA、インスリン、乳酸・ピルビン酸、血清アミノ酸、血清有機酸、尿中有機酸・アミノ酸の提出(保存)候補としています. 低血糖や脱水などで治療介入を行ったあとでも、介入後短時間の検体であればcritical sampleとしての価値がありますか?また、具体的な目安となる時間はあるのでしょうか? 
    A

    まずcritical sampleで測定しなければ行けないのは、血糖、血液ガス、アンモニアを行って何に異常があるかを確認することですが、先生の質問はその次に行うセカンドライン検査をするときにサンプルが十分になくてどうしようかと言うことだと思います。乳酸、ピルビン酸は除蛋白液に入れる必要性からあとから悩む必要性はないのではないでしょうか?血液ガス検査で乳酸が測定出来ており、正常であればさらに詳細な乳酸ピルビン酸は必要ないと思います。低血糖であればやはりインスリンは確実に測定しておくべきと思います。少量の血清しかのこっていない場合は、尿有機酸、血液濾紙アシルカルニチン分析の結果をまって、その他の検査は後で出せばいいのではないでしょうか? 低血糖で尿アミノ酸が重要になることはないですし、血漿(血清でも可)アミノ酸はこれをしないと診断出来ないと言う疾患はほぼない思います。ただし高アンモニア血症があれば血漿(血清)アミノ酸測定の必要性はぐんとあがると思います。病態の理解には低血糖であれば、遊離脂肪酸、ケトン体分画のほうが有効です。                                                                                                                                        尿は状態によりますが、代謝不全をうたがわれて来院した最初の尿であれば、治療開始後でももちろんかまいません。疾患によっては発作時でないとはっきりしない疾患もあります。ですからcritical sampleでないから検査しないではなく、まずは発作時尿がとれなくてもその後の尿でも一度有機酸分析を行っておくことも重要です。最初の時点で本当に代謝異常を疑えば、輸液等の処置後早期にカテーテル入れてでも尿はとるべきです。少量でも検査施設に相談すれば行ってもらえると思います。血液サンプルは治療でグルコース入れだしたら、血糖が評価出来ないのは当たり前ですが、インスリンなども難しいと思います。輸液でグルコースを入れると遊離脂肪酸も比較的早く低下し、輸液後の検体では遊離脂肪酸/ケトン体比が低下します。しかし検査しないよりははいいと思いますので、点滴開始20分後とかちゃんと状況を記載して相談してもらうのがいいと思います。どれだけ経ったら価値がなくなるかは難しいですが、20分なら大丈夫と言うより、ちゃんと輸液前にとると言うことが重要でしょう。せっかく検体をとっても、同じ日の何時の検体かが判らなくなったり(どれが一番最初だったのか後でわからなくなる)、室温放置したりしてしまわず、早めに冷凍庫等に保管することも重要と思います。

    EDTA抗凝固剤入りの試験管で採血された血液での検査について
    Q 対象児は2才、低血糖などの症状があり、医療機関を受診。EDTA抗凝固剤入りの試験管で採血した血液を、濾紙に塗布してタンデムマス検査を実施したいが、良いでしょうか?タンデムマス検査で影響のある指標があれば教えて欲しいです。
    A

    FIA-ESI-タンデム質量分析では、EDTA.、ヘパリンなどの抗凝固剤はフリーカルニチン、アシルカルニチン測定値への影響はないと報告されています。しかし、誘導体化法によって測定している場合には、EDTA採血によって長鎖アシルカルニチンの一部が高値になることがあります。可能であれば、新生児スクリーニング検体と同様に抗凝固剤なしで採血してスポットした検体を用いることが望ましいですが、すでにEDTA採血でろ紙にスポットされた検体があるのであれば、そのまま測定を行ってもよいと考えられます。ただし2歳児ですので基準範囲が新生児と異なる場合があることから判定は慎重に行う必要があります。また、低血糖の鑑別とのことですので、脂肪酸酸化異常症の診断目的の場合には、CPT-2欠損症、VLCAD欠損症、三頭酵素欠損症では患者であっても異常値を示さないことがあります。
    専門医師と相談のうえで、血清を用いたアシルカルニチン分析や尿有機酸分析を行って慎重に判定する必要があります。
    ご質問と直接関係はありませんが、新生児マススクリーニングにおけるDELFIA法による測定では、EDTA採血後に濾紙にスポットした検体を用いるとTSH、17-OHP等で偽陽性、偽陰性になることがあります。そのためEDTA採血についてのお尋ねがあったものと思われます。

    カルニチン代謝異常症の検査および診断の進め方について
    Q 低血糖、低カルニチン血症を繰り返す症例の検査および診断の進め方。
    A

    1)発作時のアシルカルニチン/フリーカルニチンの比の上昇があるかを確認し、タンデムマス分析によるアシルカルニチンプロ フィールの検索を行います。また間欠期(元気な時)のカルニチン分画の測定を行います。
    2)低血糖発作時(アシルカルニチン上昇時)の尿有機酸分析は診断的意義が大きいです。
    3)著明なケトーシスを伴う場合は、CPT-II欠損症をはじめとする脂肪酸酸化障害は考えにくいです。発作時の遊離脂肪酸および血中ケトン体分画の値により鑑別診断を進めます。
    4)再度sick dayに遭遇したら血清および尿保存を確実に行 い、カルニチン測定(ろ紙および血清のアシルカルニチンプロフィール を含めて)尿有機酸分析、血中ケトン体分画測定を行います。乳酸値の臨床経過による変化も重要です。
    5)エルカルチンの内服が必要かどうかは、上記のプロセスで診断を行った上で判断します。

    低カルニチン血症と低血糖
    Q 絶食約18時間で血糖50mg/dl程度となり、その際インスリン、コルチゾール等問題なく総ケトン体3500 µmol/L程度、遊離脂肪酸3 mEq/L程度で、アシドーシスなく、ケトン性低血糖と診断しました。その際、総カルニチン50程度、遊離カルニチン20程度、アシルカルニチン30程度と遊離カルニチン軽度低下、アシルカルニチン上昇でした。
    A

    絶食約18時間のデータからは、やや遊離脂肪酸、ケトン体の動員が多いかなと思いますが、ケトン血性低血糖症という診断でよろしいかと思います(Bonnefont, Eur J Pediatr, 1990; 150:80-85をご覧下さい)。可能性は低いのですが、糖新生障害であれば、高乳酸血症を認めたはずですので、血液ガスの乳酸値を御確認ください。
    遊離カルニチン20 µmol/L程度というのは、やや低めですが、それによって低血糖などの障害が生じるとは考えにくい数値です。この問題は、多くの小児科医が持っている誤解に起因しています。生化学的検査の基準値は「正常人の95%が当てはまる値」と理解して下さい。正常でも基準値から外れるひともいるということです。絶対的なものではなく、基準値から外れれば介入を要するかというと、そうでもありません。ある検査結果が、「患者さんの現在の問題となっている状況に関係している」かどうかの判断は、基準値から外れているということだけで考えるのではなく、総合的に考える必要があります。
    この症例は、カルニチン値とは無関係の、通常のケトン血性低血糖症と考えます。これ以上の精査は不要ですが、絶食を避ける食事指導をしっかり行い、調子が悪いときだけ受診するのではなく、定期的な経過観察をきちんと続けるべきかと思います。通常状態を観察することによって、食事時間の問題や、患児の摂食量の少なさや偏食が見えてくることがあります。今回の遊離カルニチンがやや低めなのは、肉を嫌うなどの偏食があるのかもしれません。その場合、さらに指導が必要だと思います。

    尿素サイクル異常の疑いの新生児の検査
    Q 低血糖(8-22mg/dL)と高アンモニア血症(250-262μg/dL)を認めた新生児の鑑別疾患と治療について
    A

    ①代謝異常症(特に尿素サイクル異常症)の可能性は? 十分にあります、というより基礎に代謝異常症があると考えて鑑別疾患を進める必要があります。  鑑別疾患 1)尿素サイクルをはじめとする各種先天性の高アンモニア血症 2)先天性有機酸代謝異常症 3)高アンモニア血症の中でも、高インスリン高アンモニア血症 4)先天性脂肪酸代謝異常症 5)ミトコンドリア病 つまり、この段階ではほぼすべての先天代謝異常症は否定できないと考えられます。 タンデムでは診断できない有機酸、脂肪酸代謝異常症があるということも含めての鑑別です。

    ②必要な検査、 必須、至急なもの 1)血中アミノ酸分析、(尿中アミノ酸分析) 2)尿中有機酸分析 3)血中インスリン値 (4)血中フリー、アシルカルニチン2分画測定) 上記の検査で診断が不十分だった時 4)血清のアシルカルニチンプロフィール分析 尿素サイクル異常症は血中アミノ酸分析のみでおおよその診断がつきます。

    ③特殊ミルクやアミノ酸投与の必要性 いまはタンパク制限が必要と思います。 経口ができるようならば、母乳はタンパク量が少ないので推奨します。 アンモニアをモニタリングしながら徐々にタンパク量の増量を図る事になります。 投与カロリーは必要量を確保しなければならないので、輸液併用になるでしょうか。 その他の特殊ミルク、アミノ酸製剤に関しては診断がある程度ついたところでの判断になります。

    いずれにせよ上に書きました、今すぐしなければならない検査の手配をすることが肝要です。 急性期の患者の事ですので、先天代謝異常症を専門とする医師に直接に連絡をとり、患者情報をリアルタイムに伝えて診断、治療に関しての意見をお聞きするのがよろしいかと思います。

    低血糖発作発症児の特殊分析や治療方針について
    Q 新生児期以降の低血糖発作発症児に対する濾紙血でのアシルカルニチン分析を、スクリーニング検査施設に依頼してもよいですか?
    A

    血清(血漿)でのアシルカルニチン分析をお勧めします。ただし、対象児がタンデムマススクリーニングでCPT-1欠損症でなかったことを確認して下さい。CPT-1欠損症は濾紙血で診断します。<濾紙血でなく血清(血漿)である理由>①濾紙血分析では、血液の半分をしめる赤血球の中のアシルカルニチンも合わせて測ります。赤血球中には多量のアシルカルニチン(長鎖アシルカルニ値が主体)が含まれています。脂肪酸酸化異常症は特定の鎖長のアシルカルニチンの増加によって診断しますが、赤血球中に多く存在する長鎖アシルカルニチンについて、軽微な増加を病的なものと判定することは実際上難しいといえます。これに対して健常者の血清(血漿)では、長鎖アシルカルニチン濃度は極めて低く、患者検体での軽微な上昇でも判別が容易です。②赤血球膜でのアシルカルニチンの移動は遊離カルニチンでも緩徐であり、特に長鎖アシルカルニチンはあまり細胞外へ出ません。乳児期早期を除き赤血球寿命は3ヶ月程度であり、個々の赤血球は産生された直後のアシルカルニチン濃度を比較的長く保持します。水酸(OH)基のあるアシルカルニチンは特に赤血球内に保持されるようです。このため、発作時の濾紙血分析でのアシルカルニチンの変化は赤血球の存在により薄められ、変化の判定が難しくなります。血清(血漿)での分析では、刻々と変化するアシルカルニチン濃度をリアルタイムで評価できます。③短鎖アシルカルニチンは、血清(血漿)中では室温放置により容易に壊されて減少しますので、検査用には速やかに冷凍保存する必要があります。アセチルカルニチン(C2)が増加していないことが脂肪酸酸化異常症診断の判断根拠になりますので注意が必要です。<検査依頼出来る検査施設は?>血清(血漿)アシルカルニチン分析を実施しているスクリーニング検査施設もありますが、NPO法人タンデムマススクリーニング・普及協会(島根本部・福井支部)で保険請求できる外注検査として実施しています。

  • 検査機関の方へ

    低体重児の再採血時の判定について
    Q 低体重児の再採血について、指針では、①生後1ヶ月 ②2.500g ③退院時のいずれかとなっているが、例えば出生体重が1.900gの児と、500gの児とでは、いずれも1ヶ月を過ぎて結果値が正常ならば、判定は正常として、同じ判断でよいのでしょうか?また、他所での判定例があれば、加えて教えて欲しいです。
    A

    低出生体重児の再採血の基準は、タンデムマスが導入されてからも指針の基準で問題ありません。
    ご質問の生下時体重が500gの超低出生体重児の場合、再採血のタイミングはこの指針の基づくと生後1ヵ月で行うことになります。
    1. 先天代謝異常症の場合:栄養の摂取が十分であればスクリーニングに問題ありません。
    2. 内分泌疾患の場合
    ・ 副腎過形成では正常(基準値以下)であれば問題ありません。再採血で基準値を超えた場合でも偽陽性の可能性もあるので、17OHP値や臨床状況によっては、精査とせず、時間をあけて再々採血とする場合もあります。
    ・ クレチン症では再採血が30週程度の場合でもTSHが正常であれば問題ありません。甲状腺ホルモンに対する中枢でのTSHの反応が十分でない可能性が考えられる場合は、個別の対応として甲状腺ホルモン(FT4、FT3)を直接測定します。
    低出生体重児の2回目の採血については、学会HPに2006年のガイドラインが載っていますので、ご参照ください。

    検体保存の方法
    Q 濾紙血検体の正しい保存方法はどのようにして決められているのでしょうか。
    A

    1.検体の保存方法(温度、湿度、保存用具;ビニール袋、アルミ製袋、乾燥剤の使用の有無等)や期間については、委託元の自治体の実施要綱及び要領または新生児スクリーニング検査受託契約書(以下、要綱等)に規定されています。指定検査機関ではその規定に基づいて、受付から検査中及び検査終了後の濾紙血液検体を保管することになります。従って、指定検査機関では自治体が規定する保管方法、保管期間をクリアできる保管設備を維持管理できるようにしておかなければなりません。
    なお、自治体の実施要綱及び要領または新生児スクリーニング検査受託契約書に規定がない場合、指定検査機関が独自に保存方法と期間を規定していると思われますが、この場合は委託元の自治体と相談して保存方法と期間を要綱等に規定していただくことをお勧めします。

    再採血検体の検査項目について
    Q 再採血検体の検査では、初回採血検体で陽性となった対象疾患の測定項目のみとすべきでしょうか、それとも全ての対象疾患の測定項目とすべきでしょうか。また、全国の自治体、検査施設ではどのように対応されていますでしょうか。
    A

    ・自治体の定める実施要綱及び検査委託する自治体と検査施設間の委託契約の規定により対応は異なります。
    ・再採血検体で初回採血検体で陽性となった項目以外も測定することは、TSHや17-OHP が遅れて上昇する遅発型の症例も検出ができるという利点があるため、全ての項目を測定している検査施設が多くなっています。ただし、保護者には再採血検体では初回採血検体と同様に全ての対象疾患の検査も実施することを再採血時に説明しておくことが必要です。

    新生児期を過ぎた児のタンデムマス検査について
    Q 新生児期にタンデムマススクリーニング(TMS)を受検できなかった場合、1)全国の自治体では初回検査を生後どれくらいまで受付しているのでしょうか。 2)新生児期以降のTMS検査結果の判定基準はどのように設定されていますか。 3)新生児期以降でもTMSの意義はあるのでしょうか。
    A

    1)出生後1か月までが新生児スクリーニングの対象と考えられますが、新生児スクリーニングにおける初回採血時期の範囲に関する全国の自治体の対応について正確なデータはありません。日本マススクリーニング学会ではすべての新生児で日齢4から6での採血を推奨し、出生時体重2000g以下の場合、①体重が2500gに達した時、②出生後1か月、③退院前のいずれかで2回目の採血を推奨しています。手術や特別な状況下で1か月以降に初回採血される例もあり得ますので、「初回検査」として受付するかどうかは予め自治体と取り決めておく必要があります。
    2)TMSでのカルニチン・アシルカルニチンは日齢、月齢、年齢で変化することから、新生児期の基準範囲(カットオフ値)を1か月以降の子どものTMSの判定に適用することはできません。従って、新生児スクリーニング検体として受付して結果を主治医へ報告する場合、新生児期以降の基準範囲(カットオフ値)がないため検査データの報告のみとし、コンサルタント医師の意見もあわせて報告すべき考えます。
    3)新生児期以降でもTMSを一度も受検していない場合、未治療の真の代謝異常症患者であれば、1歳過ぎでも明らかな異常値を呈する例も多くあることから、検査することには意義があります。この場合、主治医から依頼検査として臨床検査の一環として実施すると考えるのが適切と思われます。

  • 産婦人科・助産師等の採血機関の方へへ

    ろ紙の哺乳状況の記載内容について
    Q 採血用ろ紙に哺乳状況の記載では、1.良、 2.不良、3.極めて不良の3つの選択肢があります。
    A

    濾紙血採血時の哺乳状況への対応について日本マススクリーニング学会を含む関連学会かららガイドラインは出ていません。
    実際には、検査機関では”哺乳極めて不良”例は哺乳状況がよくなってからの2回目の採血をお願いしています。また、”哺乳不良”例では哺乳開始から72時間以上継続して哺乳されている場合は2回目採血の依頼はしていないのが一般的ですが、各検査機関で個別に対応しているのが現状です。なお、哺乳状態の判断は産科医療機関に委ねられておりますが、自治体によっては採血マニュアルを作成し、おおよその目安を定めているところもあります。いずれにしても、哺乳状況にかかわらず医療機関から送付された日齢4から6採血の濾紙血検体ではすべての検査対象項目の検査を行うべきです。これは哺乳状況に影響されない対象疾患の早期発見が重要なこと、タンデムマススクリーニング対象疾患では早期発症する疾患もあるためです。

    授乳後の採血時間について
    Q 医療機関の方針で授乳時間は決めず、頻繁に授乳することを勧めている場合、新生児スクリーニングの濾紙血液の採取は、授乳後2時間が適切とのガイドラインに適しません。哺乳後2時間以内でも問題なく検査できますか?または、2時間あけなければいけませんか?
    A

    哺乳後2時間以内での採血の場合、対象疾患によっては偽陽性(検査値が高値)となる場合がありますが、偽陰性(見逃し)となる可能性は極めて低いと考えられることから、医療機関の方針で哺乳の間隔を2時間以上あけることが難しい場合は、日齢4から6での初回採血を哺乳時間に関係なく実施してもよいと考えます。

    新生児の採血時期について
    Q タンデムマス・スクリーニング(TMS)の採血は日齢4~6日となっています。赤ちゃんの成育に問題がなければ日齢3で退院、次の来院は日齢10としている医療機関での濾紙血液検体採取の対応として、退院する日齢3で行ってよいでしょうか。または、次に来院が日齢10なので、その際に濾紙血液採取を行うのがよいのでしょうか。適切な採血時期の日齢4日と3日に違いがあるのでしょうか。
    A

    日齢4とは生まれてから96時間以降となりますので、これよりも早く退院される場合は、退院時に初回採血を行い、10日目の来院時に2回目の採血を行うことをお勧めします。 なお、これはTMSばかりでなく、従来から実施されているスクリーニングにも適用されます。
    理由:
    ①日齢4よりも前に採血された濾紙血液検体では対象疾患によっては偽陽性となる可能性が高いため(先天性甲状腺機能低下症、先天性副腎過形成症)。
    ②10日目が初回採血の場合、早期発症の可能性のある疾患(先天性副腎過形成症、ガラクトース血症Ⅰ型、アミノ酸・有機酸:脂肪酸代謝異常症の一部)では検査の実施が遅すぎて検査結果が発症前までに間に合わない場合が想起されます。

  • 地方公共団体の方へ

    各疾患毎の全国の精検率について
    Q 当自治体の精検率が適正がどうか検討したいのですが、対象疾患毎の全国の精検率の調査データがあれば教えてほしいです。
    A

    日本マススクリーニング学会技術部会が、毎年1回、全国の検査施設の新生児スクリーニング対象疾患の再採血率や精検率等を調査し、その結果を全国集計一覧表などにまとめ、指定検査機関に報告しています。また、日本マススクリーニング学会のホームページの会員専用ページにも掲載しており、各自治体、指定検査機関でのカットオフ値の検証にご利用いただけるようになっています。

    抗生剤使用による再採血率・偽陽性増加への対応
    Q 特定の医療機関における抗菌薬使用による再採血率の高値と偽陽性例の増加への適切な対応策がありましたら教えてください。
    A

    1)タンデムマススクリーニングにおいて、ピボキシル基をもつ抗菌薬が投与された新生児では、イソ吉草酸血症の指標であるイソバレリルカルニチン(C5カルニチン)が見かけ上高値となり、偽陽性の原因となることはすでに多くの報告があります。 現行のタンデムマス・スクリーニング検査では、本来の指標であるC5カルニチンとセフェム系抗菌薬(塩酸セフカペンピボキシル、セフジトレンピボキシル等;以下ピボキシル系抗菌薬)のピボキシル基がカルニチン抱合により生成するピバロイルカルニチンと区別できないため、両者が合計された濃度として測定されます。このため、ピボキシル系抗菌薬が投与された新生児では見かけ上C5カルニチン高値となり偽陽性となることがあります。
    2)C5カルニチン高値例のピボキシル系抗生剤投与による偽陽性例の低減対策としては以下の二つの方法が報告されています。
    ・採血される医療機関に対して新生児への抗菌薬使用の医学的な妥当性の検証や抗菌薬使用に関する注意喚起などを行って抗菌薬の使用を中止していただくこと。(まずはこちらをお勧めします)
    ・C5カルニチン高値例で二次検査としてLS-MS/MSによるC5カルニチンとピバロイルカルニチンの分別定量を行うことにより、ピボキシル系抗菌薬投与による偽陽性例を除外すること。

    検体採取から検査実施までの期間
    Q 産科医療機関での検体採取から検体送付までの期間、指定検査機関での検体受付から検査開始、検査結果の報告までの期間について、明確な日数に関してガイドライン等がありますか。また、その根拠やエビデンスはあるのでしょうか。祝祭日が長期で重なる時や、郵送の事情等ですぐに送付ができない場合はいかがでしょうか。
    A

    日本マススクリーニング学会のガイドライン(タンデムマススクリーニングの検査施設基準、検査実施基準 日本マススクリーニング学会誌23巻3号)で以下のとおり規定されています。
    1.産科医療機関などで日齢4から6で採血された濾紙血検体は、3から4時間の乾燥後、採血当日又は24時間以内に検査機関へ送付することになっています。なお、年末年始、連休等の対応は、行政機関から委託されている指定検査機関が受付、検査体制を産科医療機関にあらかじめ知らせておくことになっていますので、それぞれの地域で行政、指定検査機関、産科医療機関の緊密な連携体制を確立しておく必要があります。
    なお、濾紙血検体の採血後24時間以内の検査機関への送付が必要な理由は、1)濾紙血に含まれるスクリーニング対象疾患の指標物質が保管、保存によって低下するためスクリーニング検査で偽陰性となる可能性があること、2)検査施設での濾紙血検体の受付が遅れると検査開始も遅くなり、対象疾患によっては早期発症によりスクリーニングの効果が得られないことなどです。
    2.指定検査機関での検査は、濾紙血検体の受付から24時間以内(ワーキングデー)に開始し、検査結果の報告は検体受付後1~3日(ワーキングデー)とされています。

    精査費用の負担先
    Q マススクリーニング精密検査対象患者の費用の負担先について教えて下さい。
    A

    マススクリーニング精査対象患者に対して行われる検査としては以下のものがあると思われますが、それぞれについて説明します。
    1.一般的検査:血算、一般生化学検査、血液ガス分析など。これらはすべて保険対象の検査です。
    2.特殊な検査:アミノ酸分析、尿中有機酸分析、血中アシルカルニチンプロフィール分析。
    アミノ酸分析は保険対象検査です。
    尿中有機酸分析、血中アシルカルニチンプロフィール分析に関しては、以下の要件のもと保険対象検査とされています。
    この2つの検査はD010 特殊分析 8 先天性代謝異常症検査 1,200点にて請求できます。
    注意すべきはこの検査につけられている注の部分です。
    「保険医療機関内において、当該検査を行った場合に患者1人につき月1回に限り算定する。」
    日本中どの医療機関においても患者から検体を採取することはできますが、その検体を分析する施設は保険医療機関でなければなりません。わかりやすく言うと検体をSRLなどの商業検査機関に依頼すると保険対象になりません。患者が受診した医療機関は1,200点(12,000円)保険請求できます。その医療機関は検査を行った施設に検査料金を支払うこととなります。
    3.遺伝子検査:マススクリーニングの1次対象疾患に関しては、すべて遺伝学検査として保険対象となっています。D006-4 遺伝学的検査 3,880点 遺伝学的検査はどの検査施設に依頼しても問題はありません。
    4.遺伝カウンセリング:D026 検体検査判断料における規定で定められています。
    地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において、区分番号D006-4に掲げる遺伝学的検査を実施し、その結果について患者又はその家族に対し遺伝カウンセリングを行った場合には、患者1人につき月1回に限り、所定点数に500点を加算できます。

    検体保存の方法
    Q 検査終了後の濾紙血液検体の保存ですが、タンデムマススクリーニング(TMS)以前は4℃・1年としていたが、TMSでは検体保存が-20℃が良いと聞きました。何か根拠があるのでしょうか?また保存方法・期間による濾紙血検体中のスクリーニング測定物質の安定性について報告があれば教えてください。
    A

    TMSでは、乾燥濾紙血が4℃保存でも測定物質の一部が分解して検査データに影響を及ぼすことから、採血・スクリーニング時から長期間を経て再測定された際には、一部の疾患で偽陽性・偽陰性を生じる可能性が指摘されています。-20℃保存であれば、その分解による測定値の影響が抑えられますので、検査後の濾紙血を長期間保存する場合、理想的には4℃よりも-20℃かつ乾燥条件下の保存が有効とされています。濾紙血中のスクリーニング測定物質の安定性は保存方法やその期間だけでなく物質によっても大きく異なります。
    根拠としては国内の報告として下記のものがあります。
    1 山田健治ら:日本マス・スクリーニング学会誌 22(1): 29-34, 2012.
    2 石毛信之ら:日本マス・スクリーニング学会誌 22(3): 234-243, 2012.
    3 篠塚直樹ら:日本マス・スクリーニング学会誌 23(3): 288 -293 2013

    なお、検査終了後のろ紙血検体の保存期間や条件は自治体によって異なっているのが現状です。検査後の濾紙血検体をどのくらいの期間、どういった目的で保存するかは各自治体の判断により異なりますし、採血時の新生児の保護者に対する、検査済ろ紙血の保存とその後の利用目的についてインフォームドコンセントも必要となります。検査済みの濾紙血検体の保存の目的が何かを明確にして、保存期間、保存環境(温度、湿度等)を決定する必要があります。